イワシのベッカフィーコ

黒板に書かれたメニューに見慣れない名前の料理があった。
あとで調べてみると、イワシにパン粉をまぶして焼いたものだという。
ベッカフィーコという響きが忘れられず、安いイワシが手に入ったのでレシピを探して作ってみた。そのレシピは、

①オリーブオイルを熱してニンニクとアンチョビを加え、
②きつね色に炒めたパン粉、レーズン、松の実、ハーブなどを混ぜ合わせ、
③開いたイワシにのせてくるくると巻き、
④オレンジの輪切りをのせてパン粉を振りかけてオーブンで焼く

というなかなかに手間がかかるものだった。


出来上がったベッカフィーコはオレンジの甘味と酸味が鮮烈な異国の味がした。
白ワインにこれほど合う料理はかつて作れたためしがない。

 

中村不折

子規庵を訪れた後、向かいの書道博物館に足を運んだ。
著名な洋画家・書家の中村不折が蒐集した美術品や出土品が展示されている。
軸装された作品が並ぶ様子を想像していたのだが、意外にも紙本墨書は少なく、漢字が刻まれた石碑、仏像、甲骨、青銅器などのコレクションが圧巻だった。展示物の説明が書体の美しさや漢字の成り立ちなどすべて文字に言及されているのが面白く、時間が経つのを忘れた。
不折は「新宿中村屋」や「日本盛」のロゴを書いた人だと初めて知った。

 

 

 

子規庵

散歩がてら根岸の子規庵を訪れた。正岡子規が晩年を過ごした場所だ。
鶯谷駅から猥雑な通りを右に左に折れながら進むと、ブロック塀に囲まれた民家があり、それが子規庵だった。
子規が臥せっていた6畳間はガラス戸で、明るい室内から庭がよく見える。
軒先につくられた棚に大きな糸瓜がたくさん生っていた。

 

 

 

金婚式

結婚50周年を迎える両親に旅行をプレゼントした。
新婚旅行が九州だったというので、九州を一周するルートで4泊分の旅館を予約した(夫がよさそうな宿を探してくれた)。
宿泊先の一覧表と地図を作成し、各県のアンテナショップで手に入れたパンフレットと一緒に送った。
旅行の初日と最終日、宿に頼んで客室にカードを届けてもらった。両親に似ているとぼけた顔のマスコットと一緒に。
そして結婚記念日当日に花束を贈った。


十分すぎる気もするし、もっと色々できた気もする。
何はともあれ、夏に帰省した時、たまたま金婚式という言葉を耳にして良かった良かった。

 

 

フジオさん

深夜ドラマ「忘却のサチコ」を録画して観ている。
原作(漫画)が好きなのだが、ドラマも面白くて、主題歌がすごくいい。
サビの「オー!サチコさん」というフレーズを耳にするたびに、ムーンライダーズの「ニットキャップマン」を思い出して、最近よく聴いている。

 

ニットキャップマン=フジオさんのモデル(?)の常田富士男さんが7月に亡くなったことを知った。
昔の恋人がこの曲を聴いて「常田富士男に失礼な歌だなあ」とつぶやいていたのを思い出した。


・・・ダシの効いた感じのニットキャップのお似合いな人
常田富士男にそっくりなので ぼくはフジオさんと呼んでいた・・・

 

 

 

昼休み

天気の良い日は上野恩賜公園まで歩いて不忍池のほとりでおにぎりを食べる。
水鳥が気持ちよさそうに泳いでいる。鴨がいる。鵜がいる。カモメもいる。
雲ひとつない秋空。どこまでも広がる薄い青。
枯れ蓮の向こうに見えると木立とビル群。
中東からの観光客らしき人たちが子供を囲んで水鳥と記念撮影をしている。
誰にも邪魔されずに過ごす束の間の休息。
幸せだなあと思うのはこんな時。