「ファッション迷子」脱却への道

オータはファッションセンスがありません。背が高めで痩せているのでたいていの服は着ることができますが、圧倒的に絶望的にセンスがありません。ファッションにあまり興味がなく、センスを磨く努力もしなかったので、自分で洋服を買うようになってからずーーーっと「ファッション迷子」でした。若い頃からなんともぱっとしない、ちょっととんちんかんな恰好で会社に行ったりデートしたりしていました。

 

勤務先はTシャツ・ジーパンOKだったのでなんとなくカジュアル寄りでごまかしていましたが、30代後半になって「似合う服がない」「ほしい服がない」「何を着ていいか分からない」と迷走するようになりました。何を着てもしっくりこなくて出掛ける直前に何度も着替えて遅刻しそうになることもよくありました。ファッションに興味がないのに着るものに振り回されるなんて滑稽ですがつらかったです。そのくせ、前日にコーディネートを考えるといった手間は惜しみ、なんとなく新しい服を買って、なんとなく身に着けている毎日でした。

 

しかし、40歳でお堅い会社に転職したことで迷子問題はいったん棚上げされました。周りに合わせてスーツを着ることにしたため、毎日の服装に頭を悩ませることがなくなったのです。女性はスーツ必須ではなかったのですが、厳しい上司の影響でスーツを選ぶ人が多かったです。オータにとっては本当に楽ちんな日々で、日本中の会社が女性のスーツを推奨すればいいのに、とすら思いました。
 

そんなオータが自分のセンスのなさと初めてきちんと向き合ったのは42歳の冬です。職場で親しくなった女性がとてもおしゃれな人で、思い切ってファッションチェックをお願いしたのです。彼女は一度もスーツを着ず、シンプルでベーシックながらいつも素敵な着こなしをしていました。そんな彼女に休みの日に家に来てもらい、手持ち服のコーディネートと要・不要のジャッジをしてもらいました。秋冬服だけで5時間かかりました。

 

まずクローゼットからすべての服を出し、どんどんコーディネートを作ってもらいました。暗くて単調な色が多い中から彼女が作ったコーディネートは、ニットからシャツの襟や袖を見せたり、カラータイツを組み合わせたりといったさりげない工夫でしたが、色の配分が絶妙で一気にあか抜けて見えました。コーディネートを作る中で自然と手放す服も決まっていきました。

 

ぜんぶの服を広げて分かったのは、紺色と茶色がやたら目立つということです。自覚はしていましたが、紺色のひざ丈スカートが5枚並んだところを目にした時はさすがに愕然としました。ブランドも素材も購入時期も違うので自分では服をたくさん持っているような気がしていましたが、「他人から見たら全部同じに見えるね~」と言われてすとんと腑に落ちました。

 

ほかに彼女の言葉で印象に残っているのが、

「紺×茶はあり得ない、濃色×薄色でめりはりをつけよう」

「必ず試着する、バーゲンに行かない、通販で買わない」

「顔まわりに明るい色を置こう」

などなど。思い当たることがありまくりで納得しまくりでした。

 

彼女のおかげで服の処分に踏ん切りがつき、クローゼットの中身を半分くらいに減らすことができました。作ってもらったコーディネートは周囲に好評で、新しく買い足したわけでもないのにさすがだなあと感心しました。オータはその数ヶ月後に異動となり、こんどは周りに合わせてスーツを着なくなったので、彼女のアドバイスが身にしみて有り難かったです。

 

教えてもらったことはその後もずっと役に立っています。必ず試着すると決め、通販の利用をすっぱり止めたので、イメージ写真で夢を見て失敗することがなくなりました。バーゲンやファミリーセールにもほぼ行かなくなり、行かなきゃ買わなきゃと焦る気持ちが消えました。何よりクローゼットの中身が減って持ち物を把握できるようになったので、出かける前に何度も着替えることがなくなりました。

 

今のオータはセンスが良くなったわけではないのですが、少なくともひどい迷子ではなくなった気がします。いちばん変わったのは、新しく服を購入する時、手持ちの服とかぶっていないかすぐ判断できるようになったことと、試着して店員さんに見てもらうようになったことです。やっぱり他人の目線、プロの意見は大切だなあと実感しています。


試着しても相談しても失敗することはありますが、以前より服選びに慎重になり、楽しめるようになりました。いま手持ち服の7割くらいが活用頻度の高い「一軍」ですが、50歳までにオール一軍を目指したいところです。