静かな空間・親密な時間

お昼ごはんを食べに某コーヒーショップに行った時のことです。

 

すみっこのテーブルに70歳前後の女性が座っていました。ウォーキングの途中なのか、歩きやすそうな身軽な恰好の二人でした。

母と同い年くらいかな、と思いながら見るとはなしに見ていたのですが、オータが滞在していた1時間足らずのあいだ、二人は向かい合ったままほとんど身動きもせずに文庫本を読みふけっていました。テーブルには一つのトレーに二つのコーヒーカップが載っていたので、相席というわけではなさそうです。お昼時のざわついた店内で、そこだけ時間がゆっくり流れているような特別な空気が流れていました。

  

オータにも本を貸し借りしたり、感想を言い合ったりする友人がいますが、なかなか会えないので会うとおしゃべりが止まりません。それに、もし近所に住んでいたとしても相手の生活に踏み込まないよう、それほど頻繁には会わないような気がします。同じ空間で互いの存在を感じながらそれぞれの世界に没頭できるなんて羨ましい関係だなあと思いました。

 

オータがそんな風にできる相手はいまのところ母だけです。遠方に住んでいる母とはたまにしか会えませんが、父が先に休むとどちらからともなくテレビを消し、ひっそりと本を読むことがあります。それは静かで親密な時間です。コーヒーショップで見かけた二人に親近感を覚えたのは、母との時間を思い出したからかもしれません。